リサイクル通信

2021年4月212号】

鉄スクラップ上昇 / 豊かさとは

鉄スクラップ上昇

コロナ禍に見舞われる世界ですが、スクラップの需要は旺盛で、価格の上昇に繋がっています。原因の一つは、中国が今年1月に発効した中国国家規範再生鋼鉄原料輸入管理により、これまで禁止されていたスクラップの輸入が再開した事にあります。実際には春節明けからとなりましたが、各商社とも様子を見ながら輸出を再開しています。また、ベトナムでも鉄鋼需要は旺盛で、輸入を増やしています。国内でもJFEがスクラップを定期的に購入すると発表しています。

背景には、環境問題があります。従来中国では高炉による製鋼の割合が非常に高く、多くのCO2を排出しています。しかし、国際的な温暖化対策の影響を受け、高炉よりCO2排出の少ない電炉へのシフトを進めています。電炉はスクラップを熔解し、再度製品を作る設備ですから、鉄スクラップが無いと始まりません。一方でベトナムでは、国内の鉄鋼備蓄が非常に少なく、スクラップの発生があまりありません。その為、海外からの輸入に頼る以外にありません。

国内に於いても、JFEの件は、完全にCO2対策です。従来は、不足するときだけしか購入せず、荷止めも多い事から使いにくいメーカーでしたが、漸く定期購入となりました。

さて、ここまでは需要サイドの話ですが、サプライサイドで見ますと、スクラップは発生品ですから、急に沢山欲しいと言われても品物が有る訳ではありません。この需給ギャップ、或いはタイムラグに伴うギャップが価格に反映され、上がり下がりを繰り返す事になります。国内を見回すと、コロナ禍に有りながらも、製造業は堅調な様です。生産に伴いスクラップの発生が増えてくると、徐々に需給が緩和するので、上昇圧力は消えていくかもしれません。

豊かさとは

2021年4月13日の日経新聞に、温暖化と国防の記事が掲載されていました。10年前、米政権では、温暖化を米軍にとっての重要な脅威の一つに挙げていたそうです。確かに温暖化がもたらす異常気象は、各地で災害となって現れ、国民の救助に軍が動員されています。もちろん、国民の生命を守る事が、軍の責務であり、救援に向かう事に違和感は有りません。一方で、他国からの侵略を抑止する事も重要な任務です。災害出動により、これが手薄になるという事です。

 記事によると、日本に於いても2018年の自衛隊の災害派遣は、延べ119万人、2019年は106万人の災害派遣が行われております。これは約22万人の自衛隊にとって、決して軽い負担ではありません。

国防に対する脅威と言っても過言ではないのではないでしょうか。太古の昔から治水は、国家の大きな役割でした。現在の日本に於いても、その重要度は変わらないと思いますが、近年の自然災害は、我々の経験を超えているのかもしれません。

 環境に対する意識は、若い世代の方が、比較的敏感かもしれません。新品に拘らず、リサイクル品、リユース品にも抵抗感が少ない、シェアするなど、その行動スタイルにも表れています。

 かつて国際環境規格ISO14001がもてはやされましたが、リーマンショックを機に、そのステータスは瓦解していきました。最近はやりのSDGsについても懐疑的に見ていましたが、温暖化による異常気象などを身近に感じる事も多く、また若い世代の環境に対する感性が比較的強い事などから、大きな社会の潮流となる予感がしています。

 日本人で最もノーベル経済学賞に近かったと言われる宇沢弘文氏も、医療、教育、環境は、市場経済に委ねるべきではない。社会的共通資本とすべきと述べています。社会的共通資本とは、「社会的共通資本は、一つの国ないし特定の地域に住むすべての人々が、ゆたかな経済生活を営み、すぐれた文化を展開し、人間的に魅力ある社会を持続的、安定的に維持することを可能にするような社会的装置を意味する」と纏めています。経済学の原点である国富論において、アダムスミスは、全ての人々が、生活必需品と生活便益品を持てる社会を理想としていました。改めて、豊かさとは何なのか、原点であるスミスの思想を見つめ、宇沢氏の述べる社会的共通資本という考え方を見つめつつ豊かさの再定義をすべきなのかもしれません。会社の経営もその豊かさの先にあるのだと思います。

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