(夏の青空もそろそろ終わりでしょうか?)
鉄スクラップの品質
今年の春先から、鉄スクラップの品質劣化が、各電炉メーカーから指摘される様になってきました。事の発端は、今年1月から行われた中国による輸出規制です。従来、銅、アルミなどを含む機器類、配電盤などは中国に「雑品」として輸出され、現地で銅、アルミ、鉄など素材ごとに解体され、再資源化されてきました。しかし、このルートがストップした事で、我々問屋で解体処理を行う事になりました。機器類の解体は、基本的には、人による解体となりますが、これには、多大な人件費が掛かります。また、雑品として手を掛けずに輸出していた事で、解体そのものの技術も継承されず、失われた業者も多いかと思われます。その結果、悪質な業者では、他の鉄スクラップと混ぜて、切断処理などを行い、電炉メーカーに納品していたと思われます。このスクラップには、銅分などが多く含まれる事となりますので、製品の不良が頻繁に起きる事態となりました。
製鋼に於いて、銅は鉄と比重が近く分離が極めて難しい素材です。そして、圧延(鉄筋として伸ばして置く過程)後、冷却するのですが、ここで銅の方が収縮が鉄より早い為、鉄筋に「す」が入ってしまうのです。こうなると、強度は保てませんので、製品とはならないのです。
弊社の様に、シュレッダーを保有している業者では、シュレッダー処理の上、素材ごとに分別していくのですが、保有していない業者も多々いる為、上記の様な、悪質な処理をするものと思われます。また、輸出先などに於いても、同様の指摘がなされております。現在、一部のメーカー、商社では納入業者の特定を進めており、品質改善がなされない業者は、納入停止など、徐々に排除される方向にあります。業界団体である(社)日本鉄リサイクル工業九州支部では、鉄源品質向上委員会を立ち上げ、鉄源の品質を保持・改善を目的に活動を開始するなど、新たな動きも出ています。
日本産鉄スクラップの国際流通
日本からは、鉄スクラップが製鋼原料として輸出されています。年間約700万トン以上が輸出されており、その大半が、アジア諸国となっています。主な、輸出国と数量は以下の通りです。
2013年
1、韓国 348万トン
2、中国 212 万トン
3、台湾 101万トン
4、ベトナム 99万トン
2018年
1、韓国 408万トン
2、ベトナム 159万トン
3、中国 83万トン
4、台湾 49万トン
この5年間で風景が大きく変わっています。韓国は、近い事もあり、この5年間常に最有力先でした。これは、国内の資源の少なさも関係していると思われます。一方の中国は、悪質な地上鋼と呼ばれるもの(鉄を溶かし、地面に掘った溝に流すだけの鉄棒)も国による取り締まり強化を受け、壊滅的になった結果、スクラップが電炉メーカーに回る様になった結果でもあります。ベトナムでは、電炉メーカーの設置により、スクラップの購入量が増えています。まだまだ、近代化の途中であり、スクラップダウンする前のリユースマーケットが盛んであり、鉄源は輸入に頼らなくてはならない状況だと思います。
ベトナム向けは、今後益々増えていくのではないかと推察しています。隣国のカンボジアとは、陸続きであり、東西回廊など交通面でもアクセスしやすい環境にあります。恐らくカンボジアなどでも、インフラ整備に伴い、鉄筋など鉄鋼資材の需要は伸びていくでしょうし、反面、シアヌークビルなどの港湾設備は、まだまだです。ベトナムは、国内の設備投資需要もさることながら、隣国を含め、鉄鋼需要はますます伸びる事と思われます。このベトナムからも品質問題は指摘されており、日本の製鋼原料を取り扱う我々は、スクラップの処理業ではなく、製鋼原料の製造者であるとの認識を持つべきだと思います。
コラム
「アダムスミスはブレグジットを支持するか?」Linda Yueh著 では古典派から近代の経済学者までの多くが、トランプの主張に反し、自由貿易を支持するとしています。なぜならば、グローバル化は経済成長にとって極めて重要だからです。