リサイクル通信

2017年11月171号】

新たな外交のステージ

(北海道/野付半島より国後島を望む 2017年5月)

今年春、友人と車で釧路平原を北上し、斜里岳を左にみつつ斜里町に入り、知床半島の北西沿岸をクルージングし、網走までの2泊3日の旅をしてきました。その途中、寄り道して野付半島の先端まで車を走らせた時、北方四島の国後島を初めて真近に見ました。目の前から北へとその山並みが伸びている姿を眺めて、自分が立っているこの空間的広がりのなかで、(外国史的事実とは別に)実感としての領土を感じました。

新たな外交のステージ

今回、この通信を書こうとしているさなか、アメリカのトランプ大統領が初めてアジアを歴訪しており、最初に日本に立ち寄り安倍首相と数回に渡る首脳会談を行っています。そのような折なので、本来なら余り本稿にはそぐわないかもしれませんが、あえて日本の外交について書いてみたい衝動にかられました。 今回の日米首脳会談の中心的テーマは、核開発を進める北朝鮮への対応ですが、その共同記者会見のなかで、今までに日本の外交には見られなかった動きを感じました。

それは日本の安倍首相(日本政府)が唱えていた「自由で開かれたインド太平洋戦略」の実現に米国ファーストを唱えていたトランプ大統領を引き入れたことです。当然、膨大な資金をつぎ込んでいる中国の「一帯一路構想」への対抗軸を提案することで、インド・ASEAN諸国等に対して中国以外の選択枝を提供し、膨張する中国への牽制を図るといった意味合いがあります。また同時に、これから発展するアフリカ大陸を見据えるとどうしても確保しておきたい地域でもあるわけです。TTP離脱やパリ協定離脱等、他国間協議にあまり興味を示さないトランプ氏をこの日本の構想に持ち込んだ外交的成果は大きいと感じました。今までの日本の外交にはあまり見られなかった日本外交の動きを感じます。

また、上記の構想には、成長の途上にあり潜在力を秘めたインドとの連携が不可欠であり、ここにおいても、各種の経済協力や首脳同士の信頼関係構築の外交努力がスピード感をもってなされています。蛇足ですが、今月初めには、日本海で、日本の海上自衛隊・米国海軍・インド海軍の初めての3か国共同軍事演習も展開しています。

さて、今後の対中国外交の対応について、前述との関係で、もう少し深堀りしてみたいと思います。そこで再検討すべきは前述した中国の「一帯一路構造」についての日本の立ち位置について、現時点で再構築してみる必要があるのではないかということです。

この構想については、初めは中国一国主義の覇権の拡大を念頭に否定的に考えていましたが、国力をバックに拡大する中国のエネルギーを完全に押さえることは、国内的混乱でも生じない限り不可能と考えます。習近平体制の長期政権がほぼ確定した今となっては、この政権とある程度の妥協も踏まえ良好な関係を保ちつつ、日本の安全保障と経済的繁栄を確保しなくてはならないでしょう。そこで前述した「自由で開かれたインド太平洋構想」のとの合わせ技です。それはこうです。「一帯一路構想」の「一路」については中国の意向に沿い積極的に関与し政府レベル・民間レベルで協力する。中国が国益のために立ち上げたAIIB(アジアインフラ投資銀行)にもそれなりに出資する(譲歩的戦略)。このヨーロッパまでのシルクロード上の開発と発展は日本企業にも投資機会を与えることになりますし、「一路」上の国家との経済的関係も生まれ、中国一辺倒に多少の不安をもっているかもしれない国にとっても日本の投資は選択枝として喜ばれるかもしれません。

一方「一帯一路構想」の「一帯」であるインド洋を中心とする海域では、インド、ASEAN諸国、オーストラリアと更にはアメリカの関与のもとに「自由で開かれたインド太平洋戦略」を推し進め、こちらサイドの主導権のもとに、こちらのルールの中に中国を取り込んでいく(主体的戦略)。今後のアフリカや中東をにらんだこの地域は日本だけでなく、この地域の国々の安全保障上、及び経済発展上、開かれたものでなくてはならず、決して一国の独占的利益の地域にしてはならないと強く思うからです。

さて、このシナリオ・・・中国国民(主導部)がこれからの自国の長期的な繁栄を、グローバル化した国際関係のなかでどう捉えていくかにかかっているといえます。それは、中国の国家的欲求(覇権)を強引に世界に広めていくことで実現するものなのか?それとも国家的欲求を多少抑えてでも、世界秩序と良好な関係を築きながら実現していくものか? 「中華民族の偉大なる復興」が、西側世界の政治システムや価値観を否定し、歴代の王朝政治の単なる現代版としての版図拡大ならば、世界に大きな混乱を招く国家になってしまう危険をはらんでいます。

一覧に戻る

お問い合わせ

お困りごとや気になることがありましたら、
お気軽にご連絡くださいませ。
無理な売り込みをすることはありませんので、安心してお問い合わせください。

電話のアイコン04-2947-8870

8:30〜17:30
(日祝、第2・4土曜、夏期休暇、年末年始除く)

トップに戻る