リサイクル通信

2016年11月159号】

揺らぐアメリカに思う

(川面にも冬の気配:2016年11月/隅田川)

浅草/隅田川。日照の少なかった秋を通り越し、久しぶりの快晴。光の陰影も濃くなり季節は冬へ。「カレンダーをめくると、12月の足音。やり残した課題の多さに、諦念の気持ち芽生え、吹き出した北風の冷たさが、そっと寂寥の海へと背を押す。」(木枯らし小僧)

揺らぐアメリカに思う

イギリスのEU離脱を遥かに超える衝撃から、一週間が過ぎ、当初の主人公の過激な発言内容にも微妙な修正がはいり、世間も少し冷静さを取り戻しつつあります。しかし、政権公約の背景にある信条や価値観(思想)、言うなれば、基本スタンスは変わらないでしょうから、米国が現在担っている自由貿易や安全保障への関わり方と米国自身の国益?とを、どこまでバランスをとって政策を進めていくのか、推移を見守るしかありません。

しかし、歴史的にみると、圧倒的軍事力と経済力による米国主導による世界の安定、所謂、パックスアメリカーナの時代は稀有な時代ともいえます。米国の歴史的外交の基本的スタンスは1823年のモンロー宣言(ヨーロパ諸国との相互不干渉)以来、対外的には他国や、いわんや世界の役割を担うというものではありませんでした。その意味では、内向きな国家体質といえます。というより通常の国家はそうでしょう。国益が関係国の利益を通じて可能な場合のみ、他国の利益も考えるぐらいでしょう。今回の大統領選挙戦で、世界が「まさか」と思い違いしたのはこの点なのかも知れません。米国の歴史的外交スタンスから言えば、米国民の本音はこのように言えるのではないでしょか。

「第二次大戦時に、戦場とならず、国富を棄損することもなく、逆に国富と軍事力が増し、冷戦という状況下で、(米国民の本来の意思とは関係なく)米国を経済・軍事の主導的立場に押し上げてしまった。表向きは、自由・平等・人権等の価値を世界に広めるなんて格好いいことを言っているけど、本当はもっと自分たち国民のことにエネルギーを使いたいよ。なんで世界の為に我々の国富を投入しなければならないんだ。冗談じゃないよ。」これが、米国人の底流に流れている本音かもしれません。急速な経済グローバルの下、米国内で進行している所得格差の拡大が、その本音をあぶりだしたのではないでしょか。パックスアメリカーナの庇護の中で安住していた米国以外の西側諸国の我々は、米国に対して、今まで通り、大国としての理性と役割を求め、そのように考え行動するのが当たり前であり、トランプ氏の発言内容は、現実を欠いた非現実的もので、それは何も知らない空言と思い込んでいたのかもしれません。

 しかし、やはりそうは言っても・・・です。米国の軍事力・経済力、さらには自由貿易を通じて世界の秩序が構築されてしまった現環境下で、米国の外交スタンスを180度かえて、世界の秩序が耐えられるのでしょうか?もっと自覚をもってもらいたいと思っているのが米国以外の西側世界の国々です。トランプ氏の政権運営の公約の幾つかに修正が施されることを心底期待したいです。ましてや、人権尊重や正義とは無関係な独裁国家が、経済力と軍事力を増し、そのパワーで、他国をひれ伏し、中華的世界秩序を目指しているかのような今の世界状況では、なおさらです。

ただ、やがては、米国もある程度のパワーを持ちつつも、いままでのような圧倒的地位を維持することは難しいでしょう。我々も覚悟しなければなりませんし、それが必然的な世界史の流れなのかもしれません。過去の群雄割拠の時代にもどってしまうことも可能性としてはあります。但し、そうなった場合でも、節度ある関係を国家間で相互に維持できるような新たな世界的なルール・仕組み・理念の構築が切に望まれます。国連の組織の在り方を変えて、横暴な国の意思に左右されない国連の再構築はできないものでしょうか?

話をアメリカにもどします。今回の大統領選を通じて、非常に残念に思ったことがもう一つあります。それは、選挙戦を通して、政策的対立軸より、憎悪にも似た人間的(人種的)対立軸を作ってしまったことです。学校教育の現場で、生徒に向きあう先生も言葉が詰まるそうです。トランプ氏は、対外的問題と同時に国内のこの混乱を平和裏に修復しなくてはなりません。いわんや、どこかの国のように権力による弾圧で処理するならば、アメリカがアメリカでなくなってしまうことを意味します。やはりアメリカは、自由・平等・人権の国であって欲しいと強く願います。シビアな現実主義者は、それは虚構と言うかもしれません。しかし虚構も現実を動かす大きなエネルギーであることを歴史は教えています。

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