リサイクル通信

2013年8月120号】

ベトナム視察

先月になりますが、金融機関さん主催の海外視察研修でベトナムを訪問してきました。何故か、私にとってベトナムは、訪問回数の多い国で、今回で6 回目の訪問になるかと思います。

初めて訪問したのは、1992 年でした。業界団体で、将来の需要家として、その可能性を視察しようという事だったと思います。ホーチミンにある電気炉メーカー、スクラップディーラーなどを見学しました。その当時は、まだまだ旧式の電気炉であり、スクラップを輸入してといった状況ではありませんでした。日本でも既に使わなくなった形式の切断機を電気炉メーカーが使用していて、日本の問屋を兼ねた様な状況でした。もちろんスクラップディーラーには、機械設備など無く、ガスバーナーによる切断などがせいぜいだったと思います。

一方で、近代化するのも早いだろうと感じさせる部分もありました。それが電話でした。当時の日本は、ダイヤル式の電話機が主流で、徐々にプッシュホンが導入されている状況でした。それがベトナムでは、全てがプッシュホンだったのです。日本では、旧来のダイヤル式のユーザーに配慮しながら、新技術の導入を図っていましたが、何も無い国では、最初から、最新技術の導入が図れるのです。先進国と言われる国が、最新技術の導入スピードが落る一方、後進国は、迷わず新しい技術を採用できます。このスピード差によって、キャッチアップしてくる時期は、それ程遠い先では無いと感じておりました。今回の、視察ではホーチミンに於いて、日系のIT企業を訪問したのですが、2011 年9 月に創業し、既に社員200 人近い企業に発展しているそうです。

この会社は、日系の企業向けのシステム開発などを支援する業務がメインなのですが、ホームページの更新作業や、航空券の発券業務なども行っておりまし。もちろん、日本語のホームページです。航空券もある大手事務用品の通販会社の旅行サイトの運営を受託しておりました。普段、何気なく見ているホームページが実は、海外で作られている可能性も高いかもしれません。海外で作成し、インターネットで日本に送信すればいいので、どこで作成するかは、既に関係ない時代になっているのです。たかだか20 年前にプッシュホンの導入で進んでいた程度だったものが、IT業務まで、行う程に進んでいたのです。

もちろん、国として見た時の基礎体力などは、まだまだ及ぶべくもありませんが、若い世代が多く、人口ボーナスが続く国であり、人件費も100ドルそこそことポテンシャルは高い国です。生産活動を行う企業にとって、脅威としか言い様が無いかもしれません。日本の企業には、もっと先進的な事業に取り組むか、遠距離輸送の難しい商品を取り扱うかなど、かなり限定された事業しかないのかもしれません。自動車部品などは、需要地であるタイなどに集積しており、日系企業が多く進出しています。マレーシアには、家電メーカーなどが多く進出しています。労働コストは、日本と比べ物にならないくらい安い。

しかし、ホーチミンを見ても、クアラルンプールを見ても、決して貧困という訳ではありません。これらの都市には、デパートもあり、ブランド品もあり、道路ももちろん舗装され、緑地の管理も行われております。むしろ人件費の高い、日本から製造業が海外に出て行くのは、必然かもしれません。同じ単価の商品を作るのに、月給20 万円の国と、1 万円の国とでは競争になりません。それでは、日本の産業は、海外に仕事を取られ、衰退してしまうのでしょうか?一般的には、工場が海外にどんどん移転し、国内産業が空洞化していくと言われております。確かにそう見える部分もあります。しかし、統計を見ると別の世界が見えてきます。2007 年の調査では、1995 年~2002年の間に、海外進出を行った製造業で、3 年後に7%近く社員が増えているのです。

同時期の日本の国内雇用増加率は、4.5%でしたから、海外進出をした企業が国内の雇用を引き上げている事が見て取れます。まあ、考えれば当たり前かもしれません。海外での生産が増えるという事は、製造部門の強化であり、国内での研究開発など高付加価値部門の強化が必然となります。もちろん総務、経理など後方支援部隊の強化も必要になってきます。お金も収益が上がるにつれ海外の子会社から、親会社に還流されてくる事になります。

日本の企業の衰退の一番の原因は、工場の海外移転ではなく、かつては、国内だけで成立していたマーケットが情報、物流の国際化に伴って、海外に広がっていく中で、その流れに飛び込んでいこうという経営者の気概が乏しかった事ではないでしょうか?確かに、海外のマーケットでは、他国の企業とも競争しなくてはなりません。英語力も必要です。決して楽な道ではありません。しかし、明治維新当時、日本から見た世界は、今よりもっとハードルが高く見えた事でしょう。今、真の意味で失われつつあるのは、雇用ではなく臆せずチャレンジする気概かもしれません。

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