リサイクル通信

2011年7月95号】

気持ち明るく切り替えて / エネルギー危機のもう一つの側面

気持ち明るく切り替えて

今年の梅雨入りは早く、そして梅雨明けも一週間程度早く明けてしまいました。湿度の高いジメジメから解放されたのは好ましことなのですが、電力供給の不安による精神的ストレスと節電に伴う空調温度高めの肉体的ストレスが、この後も続くのかと思うと心の梅雨空は明けそうにありません・・。と、話をネガティブなトーンで続けると、昨今のやるせない国内政治の混迷、欧州経済のリスク、米国経済の変調といったマイナス要因ばかりが頭の中に湧き出し、ストレスのスパイラルに陥ってしまいそうなので止めます。


ところで、ある著名な心理学者によると、人間は本質的には、相対的にネガティブな思考性を遺伝子として組み込まれているらしいのです。それは、恐怖・不安・不信という思考性(フィルター)をデフォルトとして、「常時使うプリンター」にしておくほうが、生存という意味では有効らしいのです。なるほど、太古の時代に、我々祖先のネズミのような哺乳類が、肉食恐竜や大氷河期と行った生命の危険の確率が圧倒的に高い環境の中で生き延びるには、絶えず周りに「びくびくする」といった悲観的思考、否、感覚が種(シュ)を壊滅させない安全装置として機能したことは十分に想像がつきます。


しかし、人間にとって生命の危険が相対的に遠のいた現代社会においては、このデフォルトされたスイッチを意図的に切ることをしないと、さすがに参ってしまいそうです。そこで、ポジティブな気持ちで、世の中をみてみると、見えてくるものがあります。

エネルギー危機のもう一つの側面

国民的運動として、家庭や学校、地公体や企業とあらゆるコミュニティーで省エネ・節電活動が進められています。今回のこの動き、過去のブームと根本的に異なります。福島の原発事故が日本のエネルギー政策に大きな転換を迫っているという長期的な背景が一方にあり、また、短期的には、原発再稼働をめぐる政府の意思決定の混乱により、エネルギー消費の削減を強制的に受け入れざる負えない状況に置かれてしまったという点です。すでに「もったいない」レベルを超えて、今までのライフスタイルあるいは社会的価値観をも変えていかなくてはならないという切羽詰まった思いが、我々庶民や企業を突き動かし始めました。


個人レベルのパフォーマンスに焦点をあてても、夏の消費電力の削減では、頻繁に打ち水をしたり、電気をこまめに切ったり、また蔓化の植物で夏の強い日差しを防ぐことから、更には蓄電技術と組み合わせた太陽光や風水力、バイオ燃料等の自然エネルギーの活用まで、今までにない広がりをもって進行し始めました。電化製品や生活雑貨にしても、価格よりも、節電効果やエネルギー消費量の少ないものが選択基準となりつつあります。


このような消費サイドの変化は、当然サプライサイドに大きな影響を与えます。企業は経営資源を代替エネルギーの開発やエネルギーの高度利用技術の開発、エネルギー節約型の商品開発に振り向け始めました。環境の制約要因が、社会的価値観に変化を与え、社会の生活スタイルに有無を言わせず変革を迫る。サプライサイドは、それに対応すべく、それまで蓄積してきた技術や情報、それに開発途上の技術を融合し、時にはまた企業の枠を超えたダイナミック技術統合といった動きへと発展していきます。


日本の企業は戦後2回の石油ショックで、エネルギーの効率的利用技術や仕組みを飛躍的に伸ばし、この分野では世界トップレベルに躍り出ました。今回のエネルギー危機では、自らの供給に課せられた問題を解決しつつ、消費者サイドの変化を捉えていくといった更に困難な課題に挑戦しています。ただ、今回の危機においては、消費サイドと供給サイドの間に危機に対する共通認識、あるいは妙な一体感が醸し出されているのも事実で、この困難を乗り越えるための大きな精神的インフラが生まれつつあることを感じます。過去の危機を、日本人が何度となく克服してきた歴史的事実に注目するならば、後世の歴史家に以下のように言わしめているかもしれません。


「大震災に端を発したエネルギー危機と政府の無為無策は、日本国民をして、世界に先駆けて、全く新しい持続可能な社会システムへと導いた大きなゆらぎの役割を果たした」と。

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