3 月に入ってもすっきりした青空は見えず、雨が降ったり止んだりで梅雨のような天候が続きましたが、このところ青空も見え始め春らしくなってきました。夕方帰宅し、ジョギングなどをしていると、時として闇の中から強い梅の香が漂ってくることがあります。雨上がりの気温が上がったときほど強い香を放つような気がします。このようなとき、密やかにうごめく大地のエネルギーみたいなものを感じます。そしてやがて訪れる桜の開花、新緑の山々・・・。万物の成長を強く予感させるのがこの時季です。
そろそろ準備期
さて、世界経済はと言うと、マクロ・ミクロの各 種指標が示す通り、そして日常の生活感覚からも感じ られるように、未曾有のどん底をさ迷っている状況が 続いています。今年に入ってどの国も財政政策と金融 政策を総動員して、景気の落込みを回避しようと躍起 になっていますが、市場は思うように反応しません。
世界経済はコントロール不能に陥った飛行機のように感じ られます。しかし、今回の未曾有の不況は、金融を通 じて異常なまでに膨張した経済が、正常な機能を取り 戻そうとする過程でもあります。
その調整に耐えられ るか、耐えられないかは、各国の経済政策で持ち得る カードと手腕によるでしょうが、経済対策の効果が出 てくるのはこれからでしょう。ともあれ調整が終われ ばやがて市場は回復過程へと進んでいくわけで、嘆い ているばかりではなく、そろそろその時のための準備 をしていく時期に入っているのではないか。そのよう な気がします。
報化と景気変動
ところで、ここ数十年にわたる景気の趨勢で、私 なりに(専門家でないのでミーハーの域をでないのです が)、感じたところを記してみたいとおもいます。 第二次大戦以降の、日本の景気循環を眺めてみる と、直近の山である2007 年10 月以前の4循環の拡張 期の期間は、戦後の平均である35.9 ヶ月を、一循環 を除いて上回っております。
また米国についても同期 間の景気循環をみると、直近の山である2007 年12 月 以前の4循環の拡張期の期間について、戦後の平均で ある58 ヶ月を、やはり一循環を除いて上回っている ことがわかります。(資料の出典:日本の循環は「内閣府」、 米国のものは「全米経済研究所」)この数字から読み取れ るものは、日本も米国も1980 年代から景気の拡張期 間が延びてきていることです。折りしも、この時期は IT産業が成長し出し、情報技術、特にネットワーク 技術が飛躍的に発展し普及する時期と重なるように 思われます。
個人でも企業でも世界中の情報が瞬時に だれでもが得られるようになったことと、景気循環の 拡張期間が延び始めたのは無縁ではないように思わ れます。 景気循環とはそもそも経済の拡大のなかで物やサー ビスの需要に対する超過供給(過剰在庫)とその調整 の振幅です。超過供給がなぜ起こるかは、荒っぽく言 えば、財の供給者達が市場の需要を捉えていないから でしょう。
しかし供給者達(企業)が市場の情報をリ アルタイムに把握できるようになれば、早い時期に供給を コントロールし、超過供給(過剰在庫)は回避できる、ある いは超過供給の規模を小さくすることが可能です。結 果として、経済全体として景気変動の振幅は弱めら れ、拡張期が延びる結果となるのでしょう。 実際、情報技術を駆使した企業の象徴的な経営手法 にSCM(サプライチェーンマネージメント)があります。川上(原 料)から川下(消費)までの経済活動主体をネットワ ークで結び、消費サイドの需要を共有化することによ り流通過程の総在庫量を減少させるといったもので す。
本来は企業利純やCFを高めることが狙いです が、このようなミクロ面での企業の行動の集合はマク ロ面では供給過剰を和らげる効果をもっているはず です。景気変動の拡張期が長くなったのは、情報技術 の発展・普及によるところが大きいと思われる所以で す。
最後に、ではなぜ今回の急激な景気悪化は、上記 の情報機能が機能しなかったのでしょうか。それは実 物経済(財)の市場ではなく、膨大に膨らんだ金融・ 証券市場の破綻から起こされたものだからでしょう。 これについては、本誌11 月号でも書きましたので省 きますが、この悪化の過程で、経済の成長を支えてい た情報ネットワーク(技術)は情報の世界同期化を通じて、 経済の不確実性と人間の不安心理を増幅させる負の スパイラルの役割しか担わされなかったようです。