11月は秋から冬への季節の変わり目です。そろそろ師走の諸々のことが頭の中を占め始めてくる頃です。この時期に段取りよくスケジュール感をもって物事を処理しておけば、師走のドタバタを減らすことができるのですが、小学生の夏休みの宿題よろしく、自分自身への言い訳ならぬ言い訳をしつつ、毎年同じドタバタを繰り返しているのが常です。今年は、アメリカに端を発した金融危機が全世界に連鎖し、実物経済を冷やし、やれ金融政策の発動やら、財政政策の発動やらと、ひいてはお金をバラ撒くのバラ撒かないのと、なにやら私たちを取り巻く世間(せけん)はドタバタしています。せめて自分の周りだけでもドタバタしないよう、すべきことは段取りよく早めに処理し多少でも心の余裕をもっておきたいものです。それが環境変化への最大の心構えではないでしょうか。
金融危機から世界が得たもの
4ヶ月前の7月に、本稿で石油をはじめとする資源 価格高騰について書きましたが、今、それらの資源は 大暴落を呈しています。あまりの急激な変化に呆然と する思いです。確かに中国・インド等の新興国等の旺 盛な需要はあったのでしょうが、金融バブルがそれを 助長していたことは確かです。
そしてこのバブルが弾 けたと思ったら、弾け方が凄まじく本来取引の尺度と なる価格というものが疑心暗鬼のかたまりとなり、市 場調整機能の役割を果たさなくなってしまいました。 世界的過剰流動性のなかで生じた米国発の金融危 機が世界中に拡散したのは、大きなリスクを有する債 権が、巧妙なまでの証券細分化の技法により、まるで ウイルスのように世界中の投資資産の中に入り込ん でしまったからです。
米国のサブプライムローンのデ フォルトに始まった金融危機により、その遺伝子を持 った全ての証券が世界中で一挙に癌細胞化していっ たという感じです。そして、癌細胞が正常細胞を侵し ていくのと同じように、このウイルスの遺伝子をもっ た証券類は正常債権をも侵し始めている・・まさに世 界中が金融資産劣化の嵐に怯えている状況です。当然 金融収縮が世界的規模で始まり、実物経済へ影響を与 え始めました。昨年までの世界同時経済成長が遠い過 去のような気がします。そして今年からは世界同時不 況・・。
著名なシンクタンクによると先進国は軒並み マイナス成長に陥るとのことです。そして、特に問題 なのは資源を持たない途上国。ここに来て資源価格は 下落をしたものの、対ドル相場の下落が先進諸国より ひどく、(言葉としては相応しくありませんが)国家 として国民を食わせていくことができない状態に陥 る危険にさえあるということです。100年の一度の 危機は持たざる国の人々を苦しめています。良くも悪 くもグローバル化によって、世界が同期をとって変動 する世界に変わってしまったということです。
ところで、このことを契機に、今までとは質的レベ ルが違う新しい動きが始まっていることも確かです。 それは、今までにない国家間の、あるいは世界規模で の連携と協調という枠組みが動きだしたことです。 このような時代、国益をむき出しにした外交なり戦 略は無意味です。なぜなら、情報を始め、あらゆる分 野でのネットワークの広がりは、国家間の依存関係を深化さ せ、自国の国益は国家間全体(世界全体)での利益に 照らし合わせて追求していかなければ、成り立たたな い状況になってきているからです。
今回の世界規模での金融危機。そして世界規模での 経済の減速。これに対して、各国政府・国際機関は、 今までになく非常な危機意識をもって、連携を蜜にし た協調的・統一的な行動をとっています。世界経済が 同期をとって変動する世界では、対処する側も同期を とって、連携して対処せざるをえなくなったというこ とです。世界中のリーダー層が、同じ課題について何 度となく連絡を取り合って分析し、あるいは集まって 対応方針を定め、具体的行動を打ち出していく。過去 にこのように大規模な国家間・世界規模での連携があ ったでしょうか。
今後の実効性にばかり目は行きがち ですが、このリーダー層の一連の動き(外交)を見て いると、世界規模での統一された意思決定というもの の存在を期待交じりに強く感じたのは私だけでしょ うか。この動きを、人類英知の第一歩として捉えれば、 今後、世界規模・地球規模で生じるであろう諸々の危 機やリスクに対して、世界が一つになって行動し、乗 り越えていくというシナリオも、あながち理想の空論 ではないような気がしてきました。